害獣の一種であるハクビシンは日本全国で見られ、特に住宅地での被害が増えています。ハクビシンのフンには病原体が付着しており、感染症を引き起こすリスクがあるため、正しい対策が必要です。
このコラムでは、ハクビシンのフンによる感染症の概要とその症状、フンの特徴、処理方法を解説します。
ハクビシンのフンによる感染症の概要
ハクビシンのフンが引き起こす可能性のある代表的な感染症は、サルモネラ症・エルシニア感染症・カンピロバクター感染症などです。フンに触れた手指から経口感染する、直接伝播によって引き起こされます。
上の3つの感染症を引き起こす病原菌を、それぞれ簡単に説明します。
【サルモネラ菌】
サルモネラ菌は、牛や豚、鶏などの腸管や河川などに生息する菌です。食中毒を引き起こす細菌でどこにでもいるため、感染の可能性は常にあります。
12~48時間潜伏するといわれ、免疫力が高い場合発症しないケースもあります。発症しなくても、さらに人から人へと感染する可能性があることが、サルモネラ菌の特徴です。
【エルシニア菌】
エルシニア菌は、豚や野生動物、ペットなどの腸管や河川などにいる菌です。25~30℃が発育に適していますが、0~4℃の環境でも発育し、食中毒を引き起こします。
日本の気候はエルシニア菌が発育しやすい条件にあるため、ハクビシンのフンが住宅の屋根裏などで増殖する恐れがあります。
【カンピロバクター菌】
カンピロバクター菌は、家畜やペットに存在する菌です。動物のフンなどで汚染された水から人に感染します。0~10℃であっても生存するため、冷蔵庫で保存しても増殖する可能性があります。
【SARSを媒介する可能性】
ハクビシンがSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染拡大を引き起こした事実は、今のところ確認されていません。ハクビシンがSARSに似たコロナウイルスを持っていたことから、関連を疑われたものの、研究結果は未発表です。
ハクビシンのフンによる感染症の主な症状
ハクビシンのフンを媒介に、発生する可能性のある感染症の症状を解説します。
【サルモネラ症】
サルモネラ症は食中毒の一種で、感染すると、発熱・腹痛・下痢などが現れます。幼い子供はけいれんや意識障害、高齢者は急性脱水症状を起こして重症化しやすい菌です。免疫力の低下している人も、重症化しやすい傾向があります。
【エルシニア感染症】
エルシニア菌は0~4℃でも生存するため、井戸水などを介して、人に感染する可能性があります。エルシニア感染症は食中毒の一種で、発熱・腹痛・下痢など、サルモネラ症に似た症状が現れます。
特に腹痛が最も多く現れ、右下腹部の痛みと吐き気やおう吐の症状から、虫垂炎や終末回腸炎、腸間膜リンパ節炎などと診断を受けるケースもあります。
【カンピロバクター感染症】
カンピロバクター感染症も食中毒の一種で、発熱・下痢・腹痛・悪心・吐き気・おう吐などの症状が現れます。1週間程度で治るケースが多いものの、まれに手足のまひや顔面神経まひ、呼吸困難などの神経障害を引き起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合があります。
他にも、膵炎・肝炎・菌血症・流産などの合併症が現れることもあるため、注意しましょう。
ハクビシンのフンによるその他の健康被害
ハクビシンのフンは、感染症以外の健康被害も引き起こす恐れがあります。次の症状が出ており、住宅や敷地内でハクビシンのフンを見つけた場合、ハクビシンの可能性を考えましょう。
【アレルギー反応】
ハクビシンのフンや体にはダニやノミが付いており、放置したフンにもダニやノミが集まってきます。人の体に付くと、かゆみ・くしゃみ・水ぶくれなどのアレルギー反応の原因になります。
マダニの中にはFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスを持つ場合があり、下痢・おう吐・発熱・頭痛を引き起こすかもしれません。アレルギーとFTSは重症化すると命の危険があるため、消毒や対策を行いましょう。
【皮膚トラブル】
ハクビシンは、ヒゼンダニが寄生による皮膚病「疥癬症(かいせんしょう」にかかっている可能性が高いです。人へも感染する危険性があり、皮膚炎などを起こす恐れがあります。
ハクビシンのフンの特徴
ハクビシンのフンは5~15cmほどの細長い棒状をしており、円形の断面で直径1~2cm程度です。黒っぽい茶色や灰色をしています。
雑食性のハクビシンは特に野菜や果物を好むため、フンには野菜や果物、種子が混ざっているケースが多いです。
【フンのニオイ】
他の動物よりもニオイが少なく、果物を多く食べているときは甘いニオイがする場合もあります。フンと尿を同じ場所にするため、何度も同じ場所にされると尿のアンモニア臭によって悪臭になることもあり、早めの対処が必要です。
【フンをする場所】
ひとつの場所を決めて大量にフンをする性質があり、屋根裏などにフンをされると掃除をしてもシミができる可能性があります。
ハクビシンのフンの処理方法
ハクビシンのフンを見つけたときは、適切な方法で処理しましょう。
【フンの処理に必要な道具】
体に直接フンに触れたり吸ったりしないために、次の装備を用意しましょう。
・マスク
・ゴーグル
・処分してもいい長袖長ズボン
・ゴム手袋
フンを片付けるために必要な次の道具と、フンを取り去ったあと消毒に使う道具もあわせて準備します。
・ほうき
・ちりとり
・ビニール袋・
・雑巾やペーパータオル
・アルコールや次亜塩素酸ナトリウム消毒液
フンに直接触れない装備を身に着け、ほうきとちりとりで集めたフンをビニール袋へ入れます。乾燥したフンは風に飛びやすいので、ビニール袋の口を隙間なく閉じて結びましょう。
その後、スプレーボトルに入れておいたアルコールなどの消毒液を、処理した場所全体へかけ、雑巾などで拭き取ります。処理に使った道具は全て処分します。
【追い出しも必要】
ハクビシンのフンの処理だけでは再びフンをされてしまうため、追い出しも必要です。忌避剤などを使っても効果が短いため、専門業者への依頼がおすすめです。
ハクビシンの駆除には申請が必要で素人では行えないため、専門業者へ依頼し適切な対処をしてもらいましょう。