日本家屋の代表的な屋根材である瓦屋根は、美しい見た目や耐久性の高さが魅力です。しかしその一方で「瓦屋根は地震に弱いのでは……」と耐震性を不安視する声も見られます。そこで本記事では瓦屋根の地震対策について詳しく解説。地震に弱いと言われる理由や地震に強いとされている最新の防災瓦についてもあわせて紹介します。
現在瓦屋根の家にお住まいで耐震性に不安に感じている方、瓦屋根を使った新築やリフォームを検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
瓦屋根が地震に弱いと言われる理由とは?
地震による住宅被害のなかでも、瓦屋根の倒壊はよく見られる被害事例のひとつです。ニュースなどで瓦屋根の家が倒壊している映像を目にして、「瓦屋根は地震に弱そう」と感じた経験を持つ方も多いのではないでしょうか。では瓦屋根が地震に弱いと言われるのはなぜなのでしょうか。具体的な理由について見ていきましょう。
地震で倒壊する建物の多くは築年数が経過している
地震で倒壊する建物の特徴として、屋根材の種類に関わらずまずは築年数が経過している点が挙げられます。築年数が経過した建物は古い耐震基準で建築されており、現在の基準で建てられた建物と比較すると圧倒的に壁量が不足しています。そのため接合不良などが起こりやすい状況となっていました。
また現在の耐震基準は震度6~7の地震にも耐えられる強度を求めているのに対し、旧耐震基準は震度5で倒壊しない強度を基準としています。よって、震度7を記録した阪神・淡路大震災や東日本大震災などの大地震では、築年数が経過した建物の倒壊が多く見られました。
築年数が経過した家の屋根材は瓦屋根であることが多い
いまでこそ様々な種類のある屋根材ですが、昔の日本家屋は瓦屋根が一般的でした。そのため地震で倒壊した建物の大半は、築年数が経過しているとともに瓦屋根であることが多く、「瓦屋根の家は地震に弱い」という印象に繋がったと考えられます。
いくら耐久性の高い瓦であっても、長い築年数の中ではメンテナンスや修繕が欠かせません。メンテナンスを怠った家は、瓦を固定している漆喰が劣化してしまいます。そうなると地震をきっかけに屋根が崩れ、建物が倒壊するリスクも高まってしまうでしょう。
建物が倒壊しなくても瓦屋根に破損などが生じることがある
古い屋根瓦の場合、旧来式の施工方法で建築されているケースが多かった点も理由の一因に挙げられます。旧来式では屋根の上に土を葺き、その上に瓦を積み上げて施工されていました。
しっかりと瓦が固定されていなかったため、瓦がズレたり落下したりする地震に弱い屋根となっていたのです。よって瓦屋根自体が地震に弱いというわけではなく、瓦屋根のかつての施工方法にも問題があったと考えられます。
屋根材の重さと耐震性の関係

屋根材の重さは耐震性に影響すると言われています。これは屋根が重たいと重心の位置が高くなるためです。よって屋根材を瓦のように重たいものにすると、地震の揺れも大きくなってしまいます。一方、屋根材が軽いと重心位置が下がり、地震における揺れ幅は小さく済むため、地震で倒壊するリスクの軽減が期待できます。
このような背景から、近年では屋根を軽量化する動きが加速。瓦よりも軽量であるストレートや金属系の屋根材を選択する方も増えてきています。また旧耐震基準で建築された建物の重い屋根を、地震対策の一環として軽い屋根材へ変更するリフォームも多く実施されています。
耐震性を向上させる防災瓦とは?
地震や台風など自然災害によるこれまでの被害経験から、近年では瓦の改良が進み「防災瓦」というものが普及してきています。防災瓦は従来の瓦とどのように違うのでしょうか。防災瓦の特徴や魅力について詳しく紹介します。
防災瓦の特徴
防災瓦は、従来の瓦よりも台風や地震などの災害に強いのが特徴です。従来の瓦は屋根の上に土を葺き、その上に瓦を積み上げる「土葺き工法」、桟木(さんぎ)と呼ばれる木に瓦を引っかける「引っ掛け桟工法」という2つの施工方法が主流でした。一方、防災瓦は瓦同士を固定する「ロックアーム」という工法で瓦を固定します。瓦同士の連結を強化することで耐震性の大幅な向上を実現させています。
さらに従来の瓦よりも軽量である点も防災瓦の特徴のひとつです。従来の粘土瓦と比較すると防災瓦は1割程度軽量化されており、老朽化した木造住宅にも施工できるようになっています。
防災瓦にリフォームするメリット
防災瓦の最大の魅力は、やはり防災に強い点でしょう。ロック構造という特殊な工法により、震度7程度の大地震にも耐えられる耐震性を実現させています。加えて軽量であるため従来の瓦から防災瓦にリフォームすることで、景観を変えずに屋根の重みを軽減できます。
また耐久性が高い点も防災瓦が注目を集めている理由のひとつです。近年多く見られるようになったストレート屋根は約10年、ガルバリウム屋根は20年ほどのスパンで塗装が必要です。これに対し、防災瓦は約30年以上修繕する必要がないと言われています。
さらに防災瓦は通気性がよく、結露や湿気にも強いことから雨漏り防止にも効果的であるほか、遮音性や遮熱性にも優れており、快適な住環境を作る機能もあわせ持っています。
防災瓦にリフォームするデメリット
防災瓦は工法が特殊で手間がかかってしまうことから、ストレート屋根や金属屋根などと比べると施工費用が高くなってしまう点がデメリットに挙げられます。ただし防災瓦は耐用年数が長い屋根材です。防災瓦は30年以上メンテナンスフリーであるため、長い目で見ると費用対効果の高い屋根材と言えるでしょう。
またもうひとつのデメリットは、ほかの軽量屋根材と比較すると重量がある点です。従来の瓦屋根からは大幅に軽量化されたものの、ストレート屋根や金属屋根など一般的な屋根材のなかでは重たい部類となります。重量を重視する場合、防災瓦の選択はデメリットとなってしまうこともあるでしょう。
瓦屋根の地震対策に関してよくある質問に回答

ここでは瓦屋根の地震対策に関してよくある質問をいくつかピックアップしてお答えします。瓦屋根を使った新築やリフォームを検討している方はぜひこちらも参考にしてみてください。
地震に強い家の特徴とは?
地震に強い家に見られる特徴は次の通りです。
特に平屋の建物は正方形や長方形のものが多いことに加え、高さが低い分重心が下がるため揺れの影響を受けにくくなります。
また地盤の強さもとても重要です。土台となる地盤が頑丈でなければ、地震をきっかけに家が沈む危険性も。現在は建物を建てる際に地盤調査の実施が義務化されています。地盤が軟弱であった場合は地盤改良工事が必要となりますが、地震に強い家にするためにはしっかりとした対策が欠かせないでしょう。
瓦屋根の地震対策は専門業者に相談しよう
純和風の趣のある見た目、優れた断熱性や耐久性など瓦屋根はたくさんの魅力をあわせ持っています。ほかの屋根材と比較すると重さがある点がデメリットに挙げられますが、建物の構造がしっかりしていればそれほど不安に感じる必要はないでしょう。ただし屋根に不具合が生じたまま放置するのは危険です。次の地震や台風で瓦がヒビ割れたり雨漏りしたりする可能性があるため、メンテナンスする必要があります。
当サイトでは信頼できる屋根の修理業者を紹介しています。お住まいの住宅がある程度の築年数が経過している方や、屋根の老朽化が気になる方は、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。