屋根の防水シートは、雨漏りを防ぐために欠かせないもので、その耐用年数を理解することが住宅維持には重要です。一般的な防水シートの寿命は10~20年程度ですが、屋根の形状や環境によって異なります。特に平坦な「陸屋根」は雨水がたまりやすく、防水性能が落ちると雨漏りのリスクが高まります。本記事では、防水シートの寿命や交換のポイントを陸屋根の場合も含めて詳しく解説します。
屋根の基本構造と防水シートの役割
屋根の防水シートの役割を知るためには、基本構造を理解することが不可欠です。一般的に屋根は三層構造でできていて、外から見える瓦などの屋根材、防水シート、そして野地板の三層で構成されています。
まず、一層目となる屋根の最も外側にあるのが瓦やストレートなどの屋根材です。この屋根材は、建物を雨風から直接的に防ぐ役割を担っています。
二層目の防水シートは、屋根材の下に配置されています。屋根材の隙間から浸入してきた水分を的確にブロックすることによって、雨水の浸入を防ぐ役割を担っています。
一番内側にある三層目は野地板です。野地板は木製のベース板として屋根全体の土台という働きを担っていますが、一層目と二層目とは違い防水機能は一切ありません。
二層目の防水シートは、建物を雨から守る最後の砦として大事な役割を担っています。そのため、この防水シートが傷んでいると屋根や建物の腐敗、劣化につながる大事な部分です。建物に合った防水シートを選定することはとても重要になります。
屋根の防水シートの寿命は何年くらい?
屋根の防水シート(ルーフィング材)は、屋根内部を湿気や水漏れから守るための重要な役割を果たします。
この防水シートの寿命は種類によって異なりますが、一般的なアスファルトルーフィングは約10~15年、高分子系ルーフィングは約15年となっています。
ほかにも、改質アスファルトルーフィング、基材不織布ルーフィング、粘着ルーフィングなどさまざまな種類があり、これらの寿命は約30年と言われています。また、透湿ルーフィングなどの耐久性の高いタイプでは、寿命は30~50年ほどとされています。
寿命が近づくと、劣化によって水分が浸入し、雨漏りの原因となるリスクが増加します。適切なシートを選ぶだけでなく、定期的なメンテナンスが必要です。劣化が進む前の交換が大切で、屋根材や環境に合わせた選択が寿命を延ばすポイントになります。
寿命が近い屋根防水シートの劣化症状とは?
防水シートには、耐用年数が設定されていますが、あくまで目安であることを忘れてはいけません。劣化が進むと雨漏りや建物全体のダメージにつながるため、早めの確認と交換が大切です。防水シートの劣化は、さまざまな症状としてあらわれます。その中でも「ふくれ」、「破れ」、「ひび割れ」、「変色」、「カビや藻の発生」という5種類は、緊急性の高い劣化症状です。
ふくれは、防水シートの上側に水が入り込み、その水の影響でふくれている状態です。正常な状態では防げている水が防水シートの下まで入り込んでいる状態ですので、非常に危険な状態です。
破れは、防水シートが破れている状態です。防水シートが破れていると、その破れから水が建物内部に浸入します。すでに防水シートの機能が失われている状態ですので、早急に交換が必要になります。
ひび割れは、防水シートに小さなひび割れが生じている状態です。破れよりは劣化の程度は軽くなっているのですが、ひび割れの状態は破れに移行する寸前でもあります。放置すると大きなトラブルに発展する可能性があります。
変色は、紫外線によって防水シートの色が変わっている状態です。変色も防水性能が著しく低下しているサインとなっているため、早急に交換する必要があります。
カビや藻が発生している状態は、防水シート付近にカビや藻が発生するほどの湿気がこもりやすい環境となっているということです。通常はカビや藻が発生するような状況ではありませんので、このような状況が発生しているということは、防水機能が劣化しているサインと言えるのです。
【陸屋根の場合】防水工事の種類と特徴
「陸屋根(りくやね)」とは、勾配がほとんどなく平坦な屋根のことを指します。一般的にビルや商業施設、マンションなどで採用され、屋上を活用するためのスペースとして使われることが多いです。勾配がないために水はけが悪く、防水対策が重要になりますが、メンテナンスをしっかり行えば、屋上庭園やバルコニーなど多様な用途にも利用できるメリットがあります。
陸屋根の防水工事を依頼する際には、シート防水だけでなく、アスファルト防水やウレタン防水などと比較した上で選ぶことができます。この3つの工法は、費用だけでなく耐用年数や特徴などが大きく異なっていますので、建物の状況や個人の要望、そして費用など全ての条件を加味した上で、最も適している工法を選ぶようにしましょう。
1.シート防水
シート防水は、屋上の下地として塩化ビニールやゴム製のシートを貼り付けるシート防水です。今回紹介する3つの工法の中では、とてもシンプルな施工となっているため工期が短く費用も安いのが特徴です。シート防水の耐用年数は10年から15年となっています。
2.アスファルト防水
アスファルト防水は、屋根の下地にアスファルトを浸透させた防水シートを重ね、その上からコンクリートで押さえ込む工法になっていて、3つの工法の中で最も高い防水効果を発揮します。耐用年数は15年から30年と最も長持ちします。
3.ウレタン防水
ウレタン防水は、屋上の下地に防水剤を直接塗り重ねる工法です。デザイン性の高い注文住宅に採用されているような、複雑な形状の屋上にも対応することのできる柔軟性を持っています。ただし、耐久性に少々難があるため、トップコートを定期的に塗り替える必要があります。耐用年数は8年から10年となっていて、3つの工法の中で最も短い耐用年数となっています。
【陸屋根の場合】防水シートの寿命
陸屋根のシート防水は、平坦な屋根に敷く防水シートを用いた防水工法です。主にゴムシートや塩ビシートなどの耐久性の高い素材が使用され、屋根全体に接着または固定することで水の浸入を防ぎます。
シート防水は、高い防水機能を維持するために、劣化する前にメンテナンスをする必要があります。メンテナンスするタイミングは、耐用年数に準じたものになりますので、素材ごとの耐用年数を確認しておく必要があります。
シート防水の耐用年数は工法や素材によって大きな差があります。一般的なゴムシートの耐用年数が10~15年程度であるのに対し塩ビシートは約10~20年が耐用年数と言われています。
陸屋根は、雨水だけでなく太陽光からも大きな影響を受けます。建物の環境や異常気象なども考慮して定期的に点検を行い、破損部分の補修を行っていきましょう。防水シートの状態を定期的に確認し、劣化を見逃さないことが建物自体の寿命を延ばす結果につながります。
屋根の防水シートの寿命を知って雨漏りが発生する前に交換しよう
防水シートの寿命を知り、適切なタイミングで交換することで、大切な住宅を雨漏りから守り、修理費用の負担も軽減できます。シートの劣化は見えにくいですが、定期点検やメンテナンスを怠らず、屋根の状態をしっかり把握しましょう。長く安心して住み続けるためにも、雨漏りが発生する前の予防が大切です。